エクスポネンシャル思考が目指すのは、地球規模の課題を解決し、人類に幸福をもたらすこと。
SDGsで掲げられる17のゴールは、そのほとんどがエクスポネンシャル・テクノロジーの利用をもって成し遂げられるべきもの。つまり、エクスポネンシャル思考は、国連が掲げるサステナビリティ・ゴールを成し遂げるために必須の力であり、広い意味で考えると、エクスポネンシャル思考とサステナビリティはほぼ同義である。
エクスポネンシャル・テクノロジーを俯瞰する力はむしろ、デザイン思考やその他のツールよりもさらに人間の根底の部分に関わる必須教養、基本的生活力なのではないかと考える。(中略・本書より)

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今回紹介するのは、「エクスポテンシャル思考」(著者:斉藤 和紀氏)。たまたま書店で手にとって、はじめに の箇所を斜め読みして、シンギュラリティ大学が教えるその思考法に興味を持ったから。

シンキュラリティ大学とは(Wikipediaより):アメリカ合衆国シリコンバレーを拠点とする教育機関である。ユニバーシティ(大学)と名が付いているが、独自の校舎もなく学位の授与もない。教育、エネルギー、環境、食糧、世界的な保健、貧困、セキュリティ、水資源を人類の最も困難な課題(Global Grand Challenges)と定義し、加速的に発展する革新的技術を使ってこれらに積極的に取り組むことをミッションとしているベネフィット・コーポレーションである。また、革新的技術を開発する企業のための、新しいスタイルのスタートアップ·インキュベーターとしても各種活動を行っている。
同機関は未来学者であり「シンギュラリティは近い―人類が生命を超越するとき(Singularity is Near)」の著者でもあるレイ・カーツワイルと、「楽観主義者の未来予測(Abundance)」の著者ピーター・ディアマンディスによって2008年に創設された。
各種教育プログラムを提供し、初回のプログラムには定員40人のところ、1,200人の応募があった。また、世界各地で革新的アイデアを募るコンテストも実施し、新しい技術の開発を促進している。 

そして、エクスポネンシャルとは、「指数関数的」 という意味。つまり、インテル創業者 ムーアが発見したムーアの法則が有名ですが、もともとは、半導体の集積密度がもとになった考え方。
半導体に限らず、様々な分野のエクスポネンシャル・テクノロジーが進化を遂げる中、私たちはそれらにどう向き合うかを、その考え方をまとめたのが本書となります。

では、エクスポネンシャル・テクノロジーとは何か?ビッグデータ分析、再生可能エネルギー、サービスロボット、ナノ素材等、社会基盤や産業基盤に大きな影響を及ぼすテクノロジーのこと。筆者は、2018年時点で、特に影響ふの大きいものとして、28のテクノロジーを挙げています。

早速、その思考の本題に触れますが、本書で述べられるエクスポネンシャル思考とは何か、P.117に掲げられるフレームワークに集約されます。ここでは、その思考のフレームワークを構成する3つのレイヤーを紹介しましょう。

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●オペレーションシステムレイヤーでのエクスポネンシャル・テクノロジーを俯瞰する力

・先端テクノロジーとその関係を横断的に俯瞰する
・常識という名のリミッターにとらわれずに自らを破壊する

これらを全てのビジネスパーソンの必須の教養であり能力であると述べています。
つまり、様々な個別の技術の内容ではなく、それら技術が地球・人類・社会にどうようなインパクトを及ぼすのかを理解することと述べています。
つまり、ブロックチェーンの技術が進化すれば、中央集権社会が崩壊すること、再生可能エネルギーの市場が拡大することにより、発電能力や製造コストが下がることにより、発電コストが下がり、石油産業が大きな打撃を受けること等が挙げられます。
こうした社会の変容は、第2章にかなりの分量が割かれ、様々なテクノロジーの進化と社会への影響を多くの事例を通して紹介されています。

●オペレーティングシステムレイヤーの上位に挙げられるのが、プリケーションレイヤー

・イノベーターマインド
10%より10倍を目指すマインド
高速実験文化、失敗を許容するマインド

・ムーンショット構想力
ぶち上げて価値観を売り込む力
地球規模インパクトでの思考力

そういった意味では、テクノロジーの進化が進み、様々なコストが下がり、価値転換が行われる世の中においては、良くも悪くも壮大なビジョンを描いて、大風呂敷を広げ、周りの人々を巻き込む力と言えるでしょうか。そういった意味では、マインドセットが重要な位置を占めることが理解できます。

●最上位のアクションレイヤー

エクスポネンシャル思考の実践として、
・スキルポートフォリオの多様化
・小さい組織・個への価値の移転

本書では、小さな力でいかに速く、大きな影響力を与えるか?ということで、共創が、エクスポネンシャル思考とムーンショット構想力の有力なツールであることを挙げています。
ヤフージャパンのLODGEが事例として、共創の取り組み事例として紹介されていますが、様々な企業が同様のスペースを社内に作っていること、Weworkの様なコワーキングスペースを提供する会社に多額の投資が集まったりしていますが、共創の価値は、そうした場の提供も含めて、変化のスピードに対応するには、重要な役割を果たすことでしょう。

最後に、日本の大企業 ANAの取り組みが紹介されていました。既存の航空会社は、将来どんなサービスを提供しているのでしょうか?そんな遠い未来ではなさそうです。

なぜANAはこのアバターXプライズをスポンサードし、テレプレゼンス事業を進めるのでしょうか。ANAがのプロジェクトをトップ主導で推し進めた、その背景には、エクスポネンシャル・テクノロジーがもたらす変化への危機感あったことは疑いがありません。
言ってみれば、このアバターのテクノロジーが実現し、普及した世界においては生身の人間が飛行機で移動することはもはや時代遅れとなる可能性が大いにあります。いや、間違いなくその時代は来るでしょう。

詳細は、ANAニュースリリース 『ANA AVATAR VISION』が始動します! をご参照下さい。


ちなみに、本書の最終章(第6章)には、「ぶっ飛んだアイデアが生まれる28枚のカード」 と題して、冒頭で記した28のエクスポネンシャル・テクノロジーがアイコン化され概要が書かれたワークショップ用のカードと活用方法が紹介されています。

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本書では、「世界を変えるようなイノベーティブなアイデアは、テクノロジーとテクノロジーの交差点で生まれる。そのことをわかりやすく行うためのエクササイズです。」 という解説のもと、このカードの有効性を紹介しています。

このカードを使って、多様な人を巻き込んだ共創ワークショップが出来たらワクワクする未来が描けそうです。

決して大げさではなく、全ビジネスパーソン 必読のビジネス書と言えます。


エクスポネンシャル思考
齋藤 
大和書房
2018-05-25