あなたの家族が、家で夕食をとるとき、そこにどんな意味を求めていますか?
デザインドリブン・イノベーションとは、モノの「物質的な質」や「機能」ではなく、人々がモノに与える「意味」である。「人々は、実利的な理由だけでなく、深い感情的な理由や、心理的・社会文化的な理由からモノを買う。つまり、人々は製品を買うのではなく、その意味を買っている」 (本書より)

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「デザイン・ドリブン・イノベーション」 意味のイノベーションとは?

本書で述べられているのは、多大な資金を必要としないイノベーションの起こし方。それは、最新のテクノロジーに頼るのではなく、白物家電や非テクノロジー分野の商品等、競合他社との差別化が難しいプロダクトでも、意味のイノベーションにより、資金や人材面で劣る中小企業でもそのチャンスはあるということ。欧州発ビジネスにおけるデザインの意味を分かりやすく解説しています。

もともと「意味のイノベーション」というキーワードは、イタリアにあるミラノ工科大学 経営工学研究所に所属するロベルト・ベルガンティ教授が2009年に著した「デザイン・ドリブン・イノベーション」に登場するもの。

本書では、意味のイノベーションを進める意義を以下2点でまとめています。

1:「膨大な技術開発費が必要ない」 多大な投資をしても技術がもにになるかどうかはわからず、しかも、お金をかけたから市場で成功する確率が確実にますわけでもありません。その敷居の高さを回避することができます。

2:「かつてないほどに市場が技術イノベーションを求めていない」 当然ながら技術イノベーションのすべてに魅力がないというわけではないし、技術をメインとする企業が技術イノベーションの速度を緩めてよいというけでもありません。以前と比べると、技術イノベーションだけでは市場での成功が保証されなくなったのです。なぜなら製品の機能に加え、「サービスや体験とのバランスの良さ」が重要視されるからです。技術が絶対的な価値から相対的な価値になったわけです。



商品開発における新たな問いかけ

さて、冒頭の自宅で家族と一緒に夕食をとる時に、どんな意味を求めるのか?の問いですが、本書にはとても分かりやすい実践事例が紹介されています。
北イタリアの日用雑貨・家庭用品メーカーのアレッシィが、1994年に発売し、いまだ世界中でロングセラーを続けるワイン・オープナー「アンナG」。

アンナG

アレッシィがワインオープナーの開発にあたりとった戦略は、ユーザーが感じている既存の問題の解決ではなく、新たな意味をユーザーに提案するような戦略でした。
つまり、デザイナーの戦略は、「人はどの様にワインのコルク栓を抜いているか?」ではなく、冒頭の「家族と家で夕食をとるとき、そこにどんな意味を求めているか?」ということ。
コルクの栓を抜くという基本的な機能を備えることは、ワインオープナーとして必要最小限の機能として必要ですが、ユーザーとは一歩距離を置き、問いの立て方を変えることにより生まれた商品であることが紹介されています。


誕生日のケーキがデコレーションケーキのわけ

10年以上前のことになりますが、経済産業省のある方の講演の中で、なぜ、誕生日のケーキはショートケーキではなくて、大きなサイズのデコレーションケーキなのか?といった問いかけがありました。それは、キャンドルをケーキに挿したり、キャンドルに火をつけたり、ケーキを人数分に切り分けることが出来るから。そこから家族同士のコミュニケーションも生まれて・・・といった内容だったことを記憶していますが、まさにアンナ Gは、コルクを抜く時のそうした役割を果たしていると言えます。

なぜ、こんな話をされたのか、どの様なテーマの講演だったのかは全く思い出すことができないのですが、アンナ Gの商品開発に通じるこの話は今でも鮮明に覚えている講演の中のトピックスです。

本書では「意味のイノベーション」を導く具体的なプロセスも記載されていますので、興味のある方は本書をご参照下さい。



デザインの次に来るもの これからの商品は「意味」を考える
安西 洋之
クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
2017-04-24