マーケティング4.0は、企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を統合し、ブランド構築におけるスタイルと内容を融合させ、最終的にマシン・ツー・マシンの接続性を人間と人間の触れ合いで補完することで、顧客エンゲージメントを強化するマーケティング・アプローチである。(本書 第4章:デジタル経済におけるマーケティング4.0より)
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マーケティング4.0ではなく、マーケティング3.5かな・・という感想でした。

価値主導、より良い世界を創ることがマーケティング3.0とするなら、マーケティング4.0は、冒頭で抜粋した通り、デジタル・マーケティングの浸透による戦術がメインの内容。日本語で書かれた様々なWebの記事を読むと、マーケティング4.0は自己実現とか、精神性の話といったコメントが多く見受けられましたので、待ちに待った翻訳本を読んでの感想は、想像して内容とは異なりちょっと拍子抜けするものでした。

顧客エンゲージメントを強化するマーケティングのアプローチというのは、とても賛同できますが、オムニチャネル化の重要性、コンテンツ・マーケティングやソーシャル・リスニングの必要性等、既に語り尽くされた内容も多く含まれいました。
また、従来のマーケティングとデジタル・マーケティングの融合による、デジタル経済におけるカスタマー・ジャーニーが中心に語られているのも、原書が2016年11月に出版されていることも考えてもどうかなといった感想です。

ちなみに、3.0と4.0の日本語版のサブ・タイトルは以下の通り。

マーケティング3.0~ソーシャル・メディア時代の新法則
マーケティング4.0~スマートフォン時代の究極法則

前書はまさにその通りの内容でしたが、今回のスマートフォン時代の・・というのは、ちょっと違和感がありましたし、マーケティング3.0が価値主導のマーケティングで、世界をより良い場所にすることを目的とする崇高な内容であったことを考えると、今回はより具体的な戦術の話がメインの内容となっています。


これまで語られている「自己実現」とは?

これまで様々な記事やブログ等で散見できた自己実現とは何をもってそう語られているのか?
私なりに、第8章 ブランドの誘引力を高める人間中心のマーケティング で述べられる人間中心のブランドの特性を構築することと結び付けられると解釈しました。
他社を引き付ける人間的な6つの特性をブランドも備えるべきとの話が、第8章で展開されますが、人間個人としての自己実現ではなく、自社ブランドに関することと読み換えることにより、自己実現というキーワードをヒモ付けることができます。

「マーケターは自社ブランドの人間的側面を構築しなければならない。ブランドは見た目が魅力的で、知的に説得力があり、社交性豊かで、感情的訴求力があり、同時に強力なパーソナビリティと道徳性を示さなければならない」

そして、企業ブランドの擬人化と自己実現は、まず自分(会社)は何者であるのかを表明することが起点となることが、以下、イーロン・マスク氏に関するコメントに集約されています。

「イーロン・マスクが率いるテスラは、自動車の未来や再生可能エネルギー運用について魅力的なストーリーを語っている。テスタのようなブランドは、顧客に自己表現の土台を提供する。顧客にとって、テスラの所有は素晴らしい運転経験を得るということであり、同時に、自分はどのような人間かを明らかにするということである」


学びのポイント


本書を手にする前の印象とは異なる読後の感想となりましたが、以下ポイントは、エンゲージメントを高めるという観点から、その具体的アクションや分析手法としてとても参考になるポイントとなりました。
詳細は是非、本書をお読み下さい。

  • 伝統的なマーケティングとデジタル・マーケティングとの統合に関しては、「ブランドが競争力を増すにつれてデジタル・マーケティングの役割が増大」・「カスタマー・ジャーニーの間にブランドの介入が深まるにつれてデジタル・マーケティングの役割が増大」を軸としたマッピングにより、エンゲージメントを高めその関係性を構築するには、デジタル・マーケティングの役割や影響力が大きくなること。IMG_6945
(本書 P.86より)
  • 購買行動率(PAR)とブランド推奨率(BAR)との相関性の考え方
  • カスタマー・ジャーニーのマッピングとして示される5A(認知:AWARE、訴求:APPEAL、調査:ASK、行動:ACT、推奨:ADVOCATE)の考え方
  • カスタマー・ジャーニーマップの産業別の4つの類型(ドアノブ方・金魚型・トランペット型・漏斗型)

「ワオ!」を生み出すブランドになろう


最後に蛇足ではありますが、私も昨年末、共著により、優れた顧客体験提供の必要性をコールセンターやオムニチャネルの視点から本を執筆する機会を頂きました。(UX × Biz Book ~顧客志向のビジネス・アプローチとしてのUXデザイン~)
私の章の結論としては、オムニチャネルにより、ザッポスのコールセンターを例に挙げ、「WOW!」を提供することの重要性を述べましたが、マーケティング4.0本書の「むすび」のタイトルが、”「ワオ!」を生み出すブランドになろう”というのはちょっと驚きでした。

様々な分野の専門家が、ビジネス・パーソンを対象として、UX(ユーザーエクスペリエンス : 顧客体験)に関して述べてますので、是非こちらも興味を持たれたら併せてご一読下さい。