囚人のジレンマがゲーム理論の一つとして考案されたのは、1950年のこと。半世紀以上前の自分の利益だけを追求すれば良しとする考え方から、2017年の今、社会は、世の中のために何をすべきかを考えることが重要な要素になっている。ゲームのルールは変わった。
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今回の本の備忘録は、「海賊のジレンマ~ユースカルチャーがいかにして新しい資本主義をつくったか」

本書の海外での発行は2008年、日本語訳は2012年であること、DJやヒップホップ等の文化に疎いため、入り込めない内容も多々ありましたが、スピード感あるルポルタージュ風の本書は、WIRED誌でも高く評価され、米国ではベストセラーに。
さすがに今読むと掲載されている事例に古さは感じますが、ユースカルチャーと呼ばれる若者文化がいかに新しい市場を作り上げてきたのかということが、あらゆる業界やジャンルを超えて豊富な事例により紹介されています。本書を出版しているのがフィルムアート社というのも気になりました。

海賊はより良いコミュニティのための旗印


本書を読み終えて感じたこと、それは、副題にあるユースカルチャーはまさに、Marketing3.0の世界観であり、本書で例えられる海賊が志向するのはまさにCSV(社会は自分たちのコミュニティに置き換える必要はありますが・・)であるということ。

また、、コピペとリミックスが新しい文化を生み出し、テクノロジーの進化により形成されるゆるやかなコミュニティは、政府や市場経済と同等の力を持つ存在になりえること、それを著者は分散型の新しい民主主義、パンク資本主義として、最も優れたビジネスモデルであると結論づけています。

海賊のジレンマ マトリックスとは?

気になる囚人のジレンマを手本とする海賊のジレンマのマトリックスをチラッと公開するとこんな感じです。
興味のある方は本書を手に取りご確認下さい。
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要するに、市場を形成するA社・B社両社が海賊行為を取り締まろうとすれば、社会は最小限の付加価値した得ないということ。JASRACからエイベックスが脱退したニュースを思い出しましたが、どうも日本は海外と比べると割高な音楽ソフト。社会が付加価値を得られているとはあまり思えませんね。

パンク資本主義者は利他主義と利己主義をミックスする


最後に個人的に本書で一番共感できた箇所はこちら。

人間は皆、自分の利益のためにしか行動しないという前提がそもそも間違っている。経済学者が実験をしたところ、人々はいつも自分のことだけ考えて行動するわけではないことがわかった。社会生活の中では、公共の利益と自分の個人的な利益の両方のための、人々が協力し合っている。だからこそ、非営利の活動をする人たち、看護師や教師が存在するのだ。グラミン銀行の創設者で2006年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスは次のように述べている。「人間は他にもたくさんのことができる。しかし、経済学にはそれを表明する余地がまったくない。」


ちなみに、日本語版解説のあと書きで知りましたが、著作権法の目的は、著作権者の保護や利益の確保ではないんですね。それらは手段であって、本来の目的は「文化の発展に寄与すること」だそうです。